

エピソード(CB125T)

2台目に手にしたオートバイです。本格的な長距離ツーリングに大活躍しました。
排気量が125ccなので高速道路は使えませんが「金は無いが時間がある」身分の学生時代にはむしろ好都合で、日本全国(沖縄を除く)を走破し、地球一周分の距離を走破しました。
購入までの経緯
一台目のオートバイ[ヤマハ RX50]を手放した後しばらく間が空きましたが、次のオートバイは中古ではなく新車にする、と心に決めていました。
250ccや400ccではなく125ccにしたのは単純に予算上の理由です。特に保険代等の維持費が格安である事が決め手になりました。維持費が高くてツーリング活動の費用が足りなくなっては本末転倒だからです。
[CB125T]は当時の125ccのオートバイの中で、私がツーリングマシンとして重要視した以下の点を最も満たしていました。
- 4ストロークエンジンである事(巡航時の快適性に優れる)
- センタースタンドが装備されている事
- ヘッドライトが明るい事(12V60/55W)
- 燃料タンク容量が充分である事(14リットル入り)
- 車格が大きめである事(身長187cm)
- トリップメーターが装備されている事
- 積載能力に優れている事
- 大きめのタンデムシートとリアキャリア
- どの位置にもゴム紐のフックを掛けられるテール部のアルミ製バー
魅力

このオートバイは「125ccクラスの市販車で唯一の4ストローク2気筒エンジンを搭載 したロードスポーツ車」です。
6000回転以上でギュル〜ンとパワーが出るような高回転型のエンジン特性が魅力です。排気量が小さいので、エンジン回転が上昇する勢いの「慣性」を利用して加速させるようなフィーリングでした。
この年式のCB125Tは、各装備が上級車並みに充実しているのも大きな魅力でした。一つ前の年式(1982年式)に対して以下の点が改良されています。
- 大光量(60W/55W)のハロゲンヘッドライト
- ツーリングなどに便利なリアキャリアを標準装備
- 音色の良いダブルホーン
- ラバーマウントのフレキシブルタイプ・ウインカー
- トリップメーター付スピードメーター
CB125Tはその後もマイナーチェンジを重ねて非常に息の長いオートバイでしたが、車体の色とストライプのデザインはこの年式のCB125Tが最もカッコいいと思います。(=単なる自己満足)
思い出
今思えば4ストロークエンジン125ccのパワーなんて大したモノではないのですが、50ccから乗り換えた私にとっては「パワフルだなぁ〜!」と思いました。
制限速度は30km/hから50km/h(当時)になり精神的にもグーンと楽になりました。

このオートバイでの最大の思い出は、何と言っても「ツーリング」です。高速道路は使わずに、写真をたくさん撮りながら時間をかけて長距離を楽しむツーリングでした。(例;東京〜大阪は片道3日間)
考え方は十人十色と思いますが、大型オートバイや高速道路で楽々と「ワープ」するような移動ではなく、然るべき距離を肌で感じながら日本各地を訪れるこのようなスタイルのツーリングは、私にとってとても贅沢で、言葉では表現しきれない程に感動的な体験でした。
ツーリング中の宿泊は格安で相部屋のユースホステルが主体で、北海道ツーリングからは駅舎や橋の下などで野宿もするようになっていました。(あの頃ボクは若かった…)
維持
保険代、ガソリン代、消耗品代(タイヤ等)etc...どれも50ccのオートバイと大差は無く、必要経費としての維持費は本当に安上がりでした。一方で、長距離を走行するツーリングバイクとして、また末永く乗りたかったので、点検・整備には惜しまずに投資しました。
大事に乗ったつもりでしたが、それでも小排気量車にとっては負荷が大きかったのか、後半期はステアリング(=ハンドルの稼動部)の磨耗劣化と、排気ガスから白煙を吐く症状に悩まされました。
この「排気ガスの白煙」は、エンジンバルブ周りからの「オイル下がり」が原因だったそうです。ある程度エンジンが高回転になると突然「ブヮーッ!」と白煙が出て極端にパワーダウンするので、後続の車から注目を浴びる事しばし?(汗)
どちらも修理には出したのですが、しばらく経ってから再発し、だんだんと維持が厳しくなってきました。
万事休す?!

4万km以上走ったエンジンのピストンがどんな状態になっているかを見ようとした時に、小さな部品をエンジンの中に落としてしまったのです!ピストンはご覧の通り見る事が出来ましたが、落とした部品を残したままエンジンを回す訳にはいかず、組み立てる事が出来なくなってしまったのです!かな〜りヤバイ状況です。
エンジンを降ろさないとこれ以上はシリンダーが抜けず、落ちた部品は行方不明のまま。バイク屋でも修理を断られ、万事休す。約1ヶ月間はエンジンが開いたままの状態で放置するしかありませんでした。このまま粗大ゴミになってしまうのか…?
起死回生
思い出一杯の[CB125T]が粗大ゴミになってしまいそうになった時、オートバイ雑誌に載ったある新車広告の記事に目が釘付けになりました。そうです[トランザルプ]の発表でした。
この時点で、思い出一杯の[CB125T]に別れを告げる決心をしました。
あとは何とか[CB125T]の有終の美を飾りたい…。(粗大ゴミじゃぁ悲しすぎる!)
そこで、ピストン等の必要な部品を取寄せて、自力でエンジンを降ろして修理を試みました。

まずは降ろしたエンジンからシリンダーを外して中を見ると、行方不明だった部品が見つかりました。ラッキー!これなら望みありです!
写真はピストンを新品に交換したところです。
4ストロークエンジン(しかも2気筒)の分解組立なんて初めてだったので、作業に2日間を費やしましたが、エンジンはいとも簡単に一発で始動しました。あの瞬間の感動は今でも忘れる事が出来ません。
晩年期
見事復活を果たした時には、既に次のオートバイ[トランザルプ]の注文をした後だったので、[CB125T]とは納車と引き換えに別れを告げる予定でした。
新しいオートバイ[トランザルプ]は待ち遠しかったけれど、この復活した[CB125T]にも未練があったので、納車を待っている間は複雑な気分でした。

そしてついに別れの時です。
これは[トランザルプ]との貴重なツーショット写真です。
[CB125T]は無料で引き取ってもらいました。「東南アジアで日本の中古車の需要がある」との事だったので、ひょっとしたらどこかで余生を送っていたのかも知れません。

