

変速システム(CT125・ハンターカブ)

「カブ」という名の付くホンダのオートバイが採用する、独自の変速システム。
それに対して自分がどう感じたか、という事を記していきます。
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変速システム(変速パターン)

ハンドルの左グリップにはクラッチレバーはありません。発進・停止時に必要なクラッチ操作は「自動遠心クラッチ」という遠心力を利用した機構がやってくれます。これにより、AT限定免許でも乗れる事になっていますが、スクーターの類とは違って、変速操作は手動です。
まず、クラッチレバーが無い事に対しては、慣れるまでは左手が思わず動いてしまう事もあるだろうと思いきや、これは意外!「ただの1度も」なかったです。
次に変速操作。
左足で行う点は今まで通り。しかし!その変速パターンが通常のオートバイとは違います。
これが、これまでの35年余りの私のオートバイ人生の中で「初」なわけです。

この写真は「カブ」に乗る前の慣れ親しんだ変速パターン。カブ式の場合は、変速ギアを[N]から[1]にする際に足を踏み込む点は同じだけれど、その後の[2]→[3]→と上げていく操作、および[3]→[2]→と戻す操作が、これとは「逆」なのです。
でもこれも、実際は心配していたほどではなかった。
まず、ギアを(2→3→4)と上げていく変速操作の方は、変速ペダルを踏み込むという「今までとは逆」の操作になるわけですが、意外と操作を戸惑う事はナシ。
一方の、ギアを(4→3→2→1)と下げていく変速操作の方は、シーソー式の変速ペダルの「後ろ側(=通常のオートバイには無い)を踵で踏む」、というルールにして慣れるように心がければ、操作としては同じ「踏む」という形なので、意外と迷わず大丈夫でした。
という事で、当初は懸念していた「変速操作の違い」に対しては、意外とすぐに慣れるものだ、というのが私の印象。
変速ペダルとクラッチの事
オーナーズマニュアルには書かれていませんが、左手にクラッチレバーの無いこのオートバイは、左ステップにあるシーソー式の変速ペダルの操作がクラッチ操作も兼ねたシステムになっていて、変速操作のためにペダルが踏み込まれた状態では、クラッチが切れた状態になります。

このシーソー式の変速ペダルは、上から見るとこんな感じで、スペップ側にかなり張り出しています。不用意に足をステップに乗せるとペダルも軽く一緒に踏み込んでしまって、クラッチが切れてしまう事があり得ます。
カタログにはスタンディング(=シートから立ち上がった運転姿勢)で乗っている写真が紹介されていたりしますが、試してみたら変速ペダルに足が当たり、クラッチが切れてしまい上手くできませんでした。
それよりも注意が必要と思ったのは「低速転換」。特に発進からのUターンだと思います。
この時は、両足ともステップに乗せて車体をホールドするようにしっかりとステップを踏み込みたいのですが、この時に変速ペダルも一緒に踏み込んでしまって、クラッチが不意に切れて…。
ライダーなら分かりますね?その恐怖。
下手したら転倒、またはクラッチが変につながってUターンし損ねてぶつかります。
ロータリー式変速システム

私の頭の中のイメージでは、ギアポジションの動きの方向がこの説明図とは逆なのですが、それはともかく、信号待ちなどの停止時には、変速がロータリー式となるので、停止後に変速ギアを(4→N→1)と2回踏み込んで次の発進に備える事ができます。
発進・停止時に必要なクラッチ操作は、前述の「自動遠心クラッチ」という機構がやってくれるので、4速トップギアのままブレーキ操作だけで停止できて、そこから「カチカチッ」と2回変速ペダルを踏み込みこめば、1速ギアになって発進準備が整うわけです。
これは非常に「楽チン!」
しかし、素早く「カチカチッ」と2回連続で踏み込むと、2回目の踏み込み(N→1)が「カチッ」と変速されない場合が殆どです。
その場合でも、変速ペダルから足を離せば変速ギア用のクラッチ(=発進用のクラッチではない方)がつながることで、少し遅れて「ニョロッ」1速ギアに入ります。
カチッと確実に1速ギアに入れるのであれば、停止後に(4→N)に変えた後は、数秒待ってから(N→1)にすると上手くいきます。
変速システム(クラッチ操作編)
左手にクラッチレバーがなくシフトパターンが逆の変速システムにはすぐに慣れました。
次に慣れが必要だと気付かされたのは、「減速して停止したらすぐに発進したい場合」。
これは例えば「止まれ標識」や「歩道を横切るために一時停止してガソリンスタンドに入る」などのような場合です。
最初の頃はギクシャクするかモタつくか、します。
なぜか?
それは、この変速システムの機構上、変速ギア1段ごとに必ずクラッチをつなぐ必要があるからです。
これはニュートラル(N)ギアも1段として扱われます。リターン式変速のようにNを通過させる事はできません。
通常のオートバイの変速システムの場合は、減速から停止までの間に、クラッチを切ったまま(=車体の動きに影響なく)変速ギアを好きなタイミングで「続けてカチカチッ」と変えられます。
ここで私が重要だと思うのは、変速ペダルを「行き止まりを感じるまで」繰り返し踏み込んでいけば、何速ギアかを考えなくても1速になった事を「体感」できる、という事。
そして、停止時には1速ギアでクラッチが切れた状態、すなわち発進準備が整っているので、すぐにスムースに発進できます。

ところが、CT125・ハンターカブの変速システムでは、左手によるクラッチ操作が不要である代わりに、変速ギアごとにクラッチがつながるので、変速操作はかなり速度が落ちてからやる事になります。
特に1速ギアへの変速は、ほぼ停止するまで速度を落とさないとギクシャクします。
そしてこの変速システムは、停止するとロータリー式になってしまうので、変速ペダルの踏み込みの「行き止まり」によって1速ギアになった事を「体感」する事はできません。
スピードメーターのニュートラルランプの点灯を目視で確認して、そこから改めて1速ギアに戻すように入れる事になります。
これが、慣れない頃のギクシャクまたはモタツキの原因となります。
対処法の一つとして、停止までの減速の最中に変速ギアを下げるために、アクセルでエンジン回転を調整(=ブリッピング)しながら変速するという手段がありますが、その時の操作は足の踵(かかと)側の変速ペダルで行うので、クラッチがつながる変速ペダルの位置とエンジン回転を合わせるのは、特に1速ギアの場合はそれなりの練習が必要と思います。
ひとまず、比較的簡単な4→3→2速ギアまでの変速操作をスムースにできるように練習しておいて、1速ギアだけはほぼ停止してから変速操作をすることで、かなり改善したと思います。
「ギア抜け」した時の対処
これは通常のオートバイの変速システムでも起こり得る事ですが、変速操作をした時に、変速ペダルの操作によって「カチッ」と入らず「ギア抜け」の状態(=ギアは噛み合ってない状態)になる事があります。
こんな時、通常の変速システムのオートバイの場合は、変速ペダルを操作する足の力を抜かずにアクセルを少しだけ開けながらクラッチを軽くつないであげると、ギアが動いてカチッと入ってくれて、素早く対処する事ができます。
そして、このような操作は、既に身体に染みついているわけです。
しかしCT125・ハンターカブの変速システムで、停止時にギア抜けが発生した場合は、つい同じように変速ペダルを操作した力を抜かずにアクセルを少し開けてしまっても、クラッチが切れてしまっているので、エンジンが空回りして回転が上がります。
問題は、そこで「あ、そうか」と気付いて反射的に変速ペダルから足を離してしまう事。
…そうです、「グワン!」と急発進のような危険な状態になります。
この停止時の「ギア抜け」が発生した場合は、とにかくエンジンの回転が下がった状態で変速ペダルから足を離して、「ニョロッ」っと少し遅れてギアが入るのを待つのが正解です。
稀に走行中(=加速または減速中)にも「ギア抜け」が発生する時があります。この時、この変速システムの場合は、もう仕方ないかも(?)
通常の変速システムとは違って、変速ペダルの操作を一旦リリースしないといけないので、その時にクラッチがつながって、車速とエンジン回転数の差によって「ドカン!」とショックが生じます。

